2024年4月22日月曜日

ジェンマ125①

 みなさまごきげんよう!


本日はですね、ジェンマ125でございます。

最近流行りの長期不動車起こし、自賠責切れたのが平成16年ですから

少なくとも20年間不動車です。

が、20年のうち7年間は私が放置しました。

ある日ふと軽トラに載せられてやってきて

コレを車高短にしてホットロッド風に仕上げたいと。

私的にはまぁ軽いノリだろうと思っていました。

んでキャブは付いてないし動くのかコレと。


で、さらに1年後くらいに欠品だったキャブが持ち込まれました。

しかし放置。

忙しかったとかそういうのじゃないですね。

あってはならない事ですが、私は勝手に本気じゃないと決めつけていたんです。

セカンドバイクだし長年放置されてるし、もう熱はないんだろうと。

時々は気になりながら月日が流れていきました。

そう

他のお客様にバイク愛を熱く語る傍の倉庫の奥にはいつもジェンマ125が居たんですよ。

とんでもねー店ですよねホント。

そしてこの春です。

オーナーがポツリと「そろそろ俺のジェンマをよろしく」と。

7年間何度も顔出してるのにジェンマの事は一言も口にしなかったオーナーがですよ。

基本的にね、お客様に言わせちゃ駄目なんですよそういう事は。

勝手に関係をなぁなぁに決めつけて見て見ぬフリをする。

何故その人がウチにわざわざ依頼したのか。

そういう事に気づけない。

これじゃいけないんですよね。

今さらですが全力で復元作業を行なっていきたいと思います。


キャブは分解清掃したのでとりあえずエンジン始動に向けて、、

あららスロットルケーブルが切れてます。

新品は廃番。

ならばインナー交換をと思いましたが、アウターは錆で詰まって使い物にならず。

ジェンマの場合、スロットルホルダーにケーブルガイドをネジ止めするという

特徴のあるケーブルであり、長さも2m近くあって結構特殊です。

これは純正流用で何とかするしかありませんね。

と言うか何とかしました。

インナーは2000mmの汎用品で

アウターは同じスズキのZZとジェンマの2コイチです。

まぁちょっと無理やりですが、機能は大丈夫。


20年間屋内にあったとはいえ、中々のコンディションですが。

スズキのスクーターにしてはフレームなんか錆びていない方です。

スズキって元々価格の安い車やバイクが得意というか

コストダウン魂がハンパないので

一時期の原付スクーターのフレームや自動車のフロアが下塗りのまま

なんてのはザラでしたから。

逆に、80年中期以前はやたらと真面目で丁寧だったりするんですよね。

ボルトの頭にいちいちSマーク入れたりね。

細かい部品なんかにもいちいちMADE IN JAPANって入れたり。


まぁそんな話はさておき、まず開口部を全部塞いで鬼洗車をかまします。

こうやって裸にしてみるとよくわかるのがリアショックのストロークの長さ。

ショックは穴間で320mmもあります。

そしてそのストロークと剛性を確保する為に

リアショックのピボットはなんと燃料タンクを貫通させてシートレールを跨いでる。

変態かスズキ!!

っつーか真面目かスズキ!!


で、そんな真面目なスズキさんを裏切るべく、ロングストロークのショックは捨てて

70mm短縮のリジッドバーを製作。

縦型エンジンですしね、キャブも背の高いCVですから

流石に車高短でストロークさせる事は諦めました。

中途半端に落としてもオーナーは納得しないでしょうしね。


もう限界値の低さです。

まぁ元が有名なバイクじゃないので全然伝わらない系ですが

マフラーが丸ごとリアカウルの中に埋まっちゃう低さです。


サイドスタンドは純正風味で20mm短縮。

そう、このスタンドをどこまで短縮できるかによっても車高の下げ具合が決まります。

エイヤで片付けてバイクが直立しちゃったってのはね、やっぱスマートじゃない。

不真面目な事を真面目にやってるわけです。


さた、真面目なジェンマがジェン魔に変わりつつありますが

これまた真面目な一面で、こやつちゃんと燃料コックが付いていて

カウルの隙間からマイナスドライバーでリザーブやプライマリーに切り替えられる。

うむ、ダイヤフラムは切れてないっと。


んがしかしダイヤフラムスプリングは朽ち果てて姿を失っておりまして

はやい話がアウト!

で、純正はもちろん廃番。

そしてこの負圧コック、メインとリザーブそれぞれ2系統で入ってくるという構造。

つまりタンクから2本のホースが出てくるって事ね。

多くは1本ホースで入ってきてコック内で2系統に切り替える方式なんですが

まぁたややこしい事を、、適当な原付のコックが流用しにくいじゃねーか。。

いやまぁタンクからの配管を片方止めちゃって適当な負圧コックをブチ込んでも良い。

でもリザーブとかプライマリーは便利だしね、同じ方式でいきたいっすな。

で、こういう変なコック見覚えあるんですよ。

なんで2系統で入ってくんねん!と過去にも憤った経験が。


そうそうれはビラーゴ250のコックです。

コレならまだ新品出ました(喜

新品のコックはホース全交換してリジッドバーにステー作って固定。

この位置ならカウルの裏に手ぇ入れて切り替えできる。

あとは壊れてるスターターリレー(これは新品出た)交換して

新品バッテリー繋げばとりあえず始動できるな。


と、思ったら端子がブチ折れたり


アースの芯線が断線してスッポ抜けてきたりと

まぁ長期放置車あるある的な障害にブチあたりつつ

エンジンオイルとエレメント交換して各部にオイルを行き渡らせたら

いざエンジンスタート!


おおおお!

ガチャガチャやんけ(号泣

なんだ?ピストンリング固着でスラップ音?

はたまたクランク逝ってるのか?

外から検証してても分からん、、、

オーナーの「乗りたいから開けてくれ」という言葉に背中を押されつつヘッド剥ぐります。


カムまわり綺麗。

オイルもしっかり回ってる。

ちなみにMOTUL7100です。


タペットまわりも問題なし。

いやでもバルブが閉じ切る直前の打音は一体何なんや?

とりあえずヘッド降ろすかとカムチェーンに触れましたら


カムチェーンがビロビロやんけ!!


テンショナーでカムチェーン張ってあげたら静かになりました。

いやはやほんとヒヤヒヤしますな。

っつーのも、シリンダーガスケットとカムチェーンとクランクケースカバーガスケットがね

廃番なんですよ。

あとタペットインスペクションカバーも廃番。

エンジン組み直しするには相当根性要るって事です。

ちなみにジェンマ125はカムチェーンテンショナーがマニュアル式です。

ので3000km毎くらいに自分で調整しなきゃいけません。


さてさてお次はハブのところでブチ切れてるメーターケーブル。

何故切れたかと言うと錆による固着です。

錆でインナーケーブルが固まると、大抵はこの接続部で切れますね。

恐らくメータードライブギアの保護の為でしょうね。

で、当然のようにメーターケーブルも廃番、、、

これまた流用で直すしかありません。


どうやって流用できるケーブルを探すのかって?

ヤフオクでひたすら中古のメーターケーブルを見まくるんですよ。

接続部の形状が同じで長さが合いそうなヤツをね、ひたすら探す。

長さはわかんねーだろって話ですが

それは諸元表の全高をベースにすれば大体想像がつきます。

一般的に一番高い位置がハンドルでありメーターはその辺についてるわけですから。

そんなこんなでアホほど時間を費やして見つけたのがアドレスV125用。

少しばかり長いですがジェンマ125にそのまま流用可能です。


ケーブルを交換するにあたり分解しなきゃならないフロントサスのピボットも

やっぱりと言うかサビサビ(汁


なのでディグリースして新たにウォータープルーフグリスを練り込んでおきます。

ってかココにニードルローラーベアリング。

真面目かスズキ!

ちなみにアドレスV100は普通に金属ブッシュです。

まぁメンテしなけりゃブッシュもベアリングも同じですけどね。


結構バキバキに割れているカウル類を補修して組んでみます。

おお!シブい!


ちなみにバーハン化はオーナー自ら行ったものです。

ほんとね、グローブボックス開けたら外したエンブレムとか割れたカウルの破片とか

純正のメーターとかがザクザク出てきましてね。

大事かよ!と。


K&Sスタージスのステッカーが泣かせるぜ。

このリアフェンダーがリムにかかるくらいってのは車高短においては結構大事なディテール。

ええ大人(悪く言えばオッサン)が2人してキャッキャ喜んでおります。


んが、まだエンジンがかかって繋がるべきものが繋がっただけの状態。

ここからメーターの設置、配線の整理やシート張り替えそして実走テストと進みます。

長くなりましたのでその②に続く形でさらば!









2024年4月9日火曜日

走り込み。

みなさまごきげんよう。

さて4月で新年度スタートですね。

まったく少し前までは年度末で忙しかったというのに

間髪入れずに年度初めで忙しいって一体何なんだこのループは。

いや、ループじゃなくワープか。

まぁそんな事はどうでも良いですがオーナー様が決まった88XLH鉄仮面。


3月19日に改造車検通してきまして。

決裁は早くにおりていたのですが、3月の定番的に予約がパンパン。。

大幅に予定が遅れてしまいました。


で、原動機載せ替え(CFMからCEM)はもちろんですが

宣言通りこの姿のまま何ひとつ変更する事なく検査に合格する事ができました。

奥行きが少なくなるようにライトケースを加工して納めた

ヘッドライトのバルブもPH7のまま光軸、光量ともクリア。

これまで車検はH4が絶対と思っていましたが、PH7で通せるとなると幅が広がります。

と、まぁ検査に受かったのは良きことですが

検査合格は公道を走るお許しを得たに過ぎず

ただのスタート地点でしかありません。


そりゃね、予備検渡しにしてオーナー様に登録だけしてもらえば楽だし効率良いです。

ですが全バラにして組み立て直した改造車でいきなり走り出すのはリスキーですし

こういう改造車は必ず何かしら初期トラブルや調整箇所が出てくるものです。

まぁ改造車に限らず中古車もそうなんですけどね。

何度でも言いますが、車検を通す事自体は簡単なんです。

とりあえず保安基準に適合してれば良いワケで、最低限の検査でしかない。

だから特に改造車やレストア車はキチンとナンバー付けてロードテストしないと

後でとんでもない事になっちゃったりするんです。

まぁロードテストしてても何かが起きたりはするんですけどね。


で、実際にロードテストに出てみると思いの外不具合が出なくてですね。

最初は10kmを4本、20kmを3本で100km走ったら負荷かけて曲げていく計画でしたが

最初の10km時点でシフターのポジション変更とリアサスのプリロード増し

あと膝にイグニッションキーが当たりそうなので位置変更しただけで

全く不具合なく調子良く走ってしまい拍子抜けです。


あ、そうそうオーナー様は外回りにも使われるという事なので

服が汚れてはいけないと思いチェーンガードを追加しておきました。

以前は「そんなモン要らん!」って考えでしたが

私もこういう気遣いができるようになったのかと思うと感慨深いものがありますな。


で、もうタラタラ走っててもしょうがないかって事で距離縛りもヤメにして

いつものホームコースでテストしていく事にしました。

自分で言うのもナンですが、このバイク本当に乗りやすいです。

と、言うのも一般的なスポーツスターと違ってシート位置を限界まで前に寄せてるんですね。

そしてバックステップを組む事で、所謂一般的なバイクに近いステップ位置になってる。

なのでステップをきっちり踏んでステップ加重が容易なのと

肘がしっかり曲がって余裕があるのでポジションもキツくない。

エボスポーツのシートやステップの位置って加重し難いんですよね。

だからニーグリップバーを装着すると支点ができてステップを踏みやすくなる。

まぁガニ股でバイク乗る勢にはわからない話でしょうが(毒

私ね、意外と真面目にバイク作ってるんです。


35ダブルディスクも必要十分によく効きます。

フロントだけで止めようとする向きには物足りないかもしれませんが

コントロールするという面ではこのフロントブレーキでも何の問題もありませんし

その為にリアは2000年代の純正対向4ポットキャリパーをぶっ込んでます。

そして敢えての鉄ローターにオーガニックパッドでもあります。

流石サスに関しては特にリア、これはオーリンズとか

純正のプレミアムライドなんかを入れるともっと良くなりそうな感触ですね。

Egに関してはミッション含めて元気いっぱいです。

点火はダイナSとNSGの組み合わせで、マフラーは触媒タイプのインナーバッフルを入れて

排気はおさえ気味、キャブもMJのみ変更ですが3速オートマ走法がやりやすい。

ドラッグパイプにローパスバッフルでひたすらブン回す仕様の1号機と比べて

出てくるトルクは同じでも引き出すポイントが違うと言うか

暴力的なフィーリングが上手く躾られてるなという印象。

NSGにおいてはアイアン含めたXL系についてもう少し研究していきたいですね。


何にせよ、やっぱり走り込んでいくとバイクに生命感が出てきます。

これはどこかで止まるものではなく、走り続ければ走り続けるほどに強くなっていく。

10年も走り込めばなんとも言えない雰囲気を醸し出してくるでしょう。

もちろんそれはオーナーの楽しみなわけですが

作り手がその下準備はしっかりやっておかないとですね。

よく勘違いされるんですが、私は走り込み好きじゃありません。

人様のバイクで常に音や匂い、振動や挙動に気を遣いながら走り続けるわけですから。

コケちゃった、壊しちゃったじゃお話にならない。

納期は遅れるしガソリン代は自分もちだし、時間だってそれなりにかかる。

普通に考えれば楽しくも何ともない作業です。

それでも走らなきゃ見えない事があって、それが見つかるからやる。

これだけやっても後悔する事すらあるのに、でも走り込むのは

やっぱり

走って知っていきたいからなんですよね。

人の為は自分の為っていうかね

このバイクを知ってもらう為にこのくらいの準備は必要だなと。

置き物じゃないから。

バイクは走っていないと生きていけないから。

すべては走らせてもらう為。


ってなワケで

もう少し走り込んで、オーナー様ご要望のETCを取り付けて納車アレンジへと進みます。


ではさらば!








2024年3月31日日曜日

カブのチューブレス化。

 みなさまごきげんようw

いやー、暖かくなってきてマジでゴキゲンですよホント。

言うても天気悪い日が続いたりで、ロクに走れないどころか

作業完了車両のお渡しも先延ばしになってしまう始末で

ホント異常気象かよって感じですな。

まぁ2月中でギリギリお渡し予定の車両を無事に納車できたので良しとしましょう。

本日はほぼ新車なのにウチであれこれいじらせてもらっているスーパーカブ110。

パンクのリスク回避の為チューブレス化したいとのご依頼です。

たしかに、チューブレスだとパンクしてもどこでもスグ直せますから。

実際、現行のJA59はキャストホイールにチューブレスタイヤですしね。

もちろんチューブタイヤにも低圧でも衝撃に強かったり

ホイールが歪んでても空気が漏れないというメリットがありますが

一般的な使用で空気圧管理をキチンと行っていればチューブレスで必要十分ではあります。

チューブが入っていない分軽くなりますしね。

と、言いつつ私のジムニーにはわざわざ重いラリーチューブ入れてますけども。


オーナー指定のタイヤはVeeRubberのホワイトウォール。

このタイヤ、値段がスゲー高いっす。

それでいてビードの精度とか、細かい造りはイマイチ、、

ただカブのサイズでホワイトウォールっていうのはコレしか無かったんですなぁ。

普通にキャストホイールに組むならまだしも

スポークホイールのチューブレス化加工でキチンとエア圧を保持できるのか

微妙に不安です。


スポークホイールのチューブレス化においてはOUTEXさんのキットを使います。

元々はスーパーバイカーズとかターミネーターズの連中がやってた印象なんですが

今やキチンと商品化されてラインナップも多種多様なんですな。


早速チューブレスキットを組んでいきますが、コレが超大変w

初めての施工な事もあって一本あたり3時間くらいかかってしまいました。

リアはリム幅があるのでまだ良いですが、1.40のフロントはかなり厳しいクリアランスです。

内容的には強力な両面テープでニップル部を密閉して保護シートを貼っていく作業ですが

ビードの逃げを確保するとなるとホントにキワキワです。

セローなんかは一時期からリアをスポークホイールのままチューブレス化しましたが

ある程度細いリムの場合はあのリム構造じゃないと確かに難しいかもですね。


しかも組むタイヤがホワイトウォールなのでモノスゲー気を遣いますですよ。

因みにホワイトウォールやホワイトリボンはクレンザーと亀の子タワシで掃除すると

保護剤の青いのも取れるし常に綺麗に保てます。


あと気になるのはチューブ仕様のリムにチューブレスタイヤという

ビードの密着性の問題ですかね。

ビードシーラーを使えば解消するんですが、ホワイトウォールとなるとちょっとね、、

実際、エア圧が低くなるとビードからのエア漏れは確実に起こると思います。

こういったイレギュラーな組み合わせとなると

エア圧管理はチューブの時よりもっとシビアに行うのがベストです。

私的にはエア圧規正は2週間に一度は行ってもらいたいという考えなので良いですが

その辺ズボラな人はチューブレス化は考え直した方かと。

特にカブの場合は。

まぁJA07のどっかの仕向け地用のキャストホイールを組めばその辺も解決なんですが

まぁアレはアレでデザインがねぇ、、

JA59のキャスト使うとディスク化しなきゃならないし。

まぁアレだ、何するにしてもアレコレ考える事は多いよなってところですわな。


そいでもって今回はUSB電源の取り出し箇所設置も承りまして。

こんな時のために配線弄った際にIG+とアースの線を1系統用意していた私は偉いw

変圧器も何とかフロントカバー内に収める事ができて一安心です。

そういや昔はバイク買ったらブレーキホースをステンメッシュに変えて

ミラーをナポミラにしてウインカーをヨーロピになんてノリでしたが

今や最初に何するかっていうとUSBとかスマホホルダーとかグリップヒーターなんてのが

それらにとって代わってるというか、下手すりゃオプション設定があったりするんですな。

まぁ時代ですわ。


まぁそういう時代遅れ野郎の戯言はさておき、確かにホワイトウォールはお洒落ですな。


車体の配色をより際立たせたいというオーナーの意図にも確かに納得です。


まぁ私みたいな非オシャレ人間からすればタイヤはしっかりグリップして

パターンがカッコよければ黒くて全然OKなワケですが

確かにコレはコレで良いっすな。

オーナー様にも大変気に入って頂けて良かったぜってなところです。

4月もボチボチ作業入っておりますので

何かご入用でしたら今のうちにご予約お願い致しますという毎度の締めくくりでさらば!








2024年3月24日日曜日

他人(ひと)に頼む事の意味。

 みなさまごきげんよう( ´∀`)

シーズンインだというのに悪天候が続いておりますな。


3月21日でコレですよ、、桜咲くのかホントに。

雪じゃなければ雨が続くし、ほんと単車乗りにとっては困ったチャンです。


でと、作業は95年式のゼファー、C7ですね。

リアブレーキが効きっぱなしになるという事で入庫です。

所謂ブレーキ引きずりですが、実はブレーキ引きずってる車両結構多いです。

引きずりと一言で言っても程度によって修理も変わってきますので。

たとえば引きずってるからとピストンの揉み出しを試みる。

それで直るケースの場合、ほんと軽微な引きずりであって

オーナーがよっぽど気を遣って点検してないと気づかないレベルだったりします。

ローターが焼けたり押し歩きが重いレベルでしたら素直にOHが早道。


その辺はキャリパー外して見ると大体判断がつきます。

人は見た目で判断しちゃいけませんが、バイクは見た目で判断してOK。

常に整備されている車両は基本的に綺麗です。

この錆具合からするともうフルOHが望ましいですな。


パッドピンも錆びてますね。

当然、パッドのスライドに引っかかりがあれば引きずりの原因になります。

同じ理屈で片押しキャリパーの場合スライドピンの固着による引きずりも多いです。

車体装着状態でキャリパーが動かないようではバツだと思ってOKでしょう。

あとはパッドのベースプレートの反りも引きずりの原因です。

この辺は熱の入れ方にもよりますが

安っすいワケわかんねーパッドとか使ってるとありがちです。


ディスクブレーキのピストンの戻りはオイルシールのロールバック頼りなのは周知の通り。

これが柔軟性を失っていれば勿論ピストンの戻りが悪くなりますし

意外と外側に装着されているダストシール溝が腐食で太り

ダストシールがせり出してきて悪さをしていたりもします。

実はコレが一番多かったりするんですが、、

ダストシールは正常であっても結構フリクションがあるもので

レーシングキャリパーがダストシールレスなのもその為です。

ちなみに私は個人的好みにてダストシールを外しちゃったり

レーシングキャリパーであるCP2696を使用したりしていますが

メンテ頻度が低い一般的な車両には全くお勧めできませんですよ。


キャリパーピストンの状態も勿論大切です。

特にダストの多いパッドを使用していると、露出しているピストン部にダストが積層

それが固着し、いずれは発錆してピストンを押し戻した際に

ピストンシールやダストシールを傷めます。

いやいや俺ぁそんなにピストン戻さないぜって?

ローターが減っていてパッドが出過ぎている場合

ある程度ピストンを押し戻さないとキャリパー外れませんよね。


マスターシリンダーはリターンポートの詰まりを要チェック。

クッソ細い経路なので整備不良だと詰まりがち=フルードが戻らないので引きずります。

マスターがダメなケースは長期放置車両に多いですな。


色々と分解して検証した結果、これだけの部品を交換する事になりまして。

過剰整備気味ですが、95年式という車齢を考えると

新品部品が出るうちにしっかり交換しておきましょうってなところですね。

まぁブレーキ関係に関しては汎用性が高くてあまり部品には困らないわけですが

世の中何があるかわかりませんしね。

全てリフレッシュという安心を買って頂こうと。

そもそもブレーキをケチるなんて命知らずにも程があるわけで

個人的には性能や耐久性がハッキリしない安物をブレーキに投入したり

整備代をケチるコスト重視の考え方には反吐しか出ませんし

たとえ値段が高くなっても耐久性や性能でキッチリ回収すれば良いという考えなので

安物パーツで安く修理してくださいというような額面しか見えないお客様は

ハッキリ言って作業をお断りさせて頂いております。

そもそも、安くお願いしますってのは部品の単価か工賃を下げる以外に不可能なわけで

ワケわんねー部品を組みたくなければ

手間を省いて得るものまで省くような事もしたくないんですよ。


パッドはデイトナのゴールデンパッドχでいきます。

キャリパーピストン、各シール関係とマスターのピストンおよびカップ

パッドピンとクリップ、Oリングとブリーダープラグも新品。


カップはご覧のように痩せちゃってます。

こういうのは数を見てないと新品と比較しない限りわかりにくいですよね。

で、どこがダメかっていう判断も結局全バラしないとわからない。

特に整備履歴のハッキリしない古い車両の場合は

不具合箇所はフルOHを前提に考えておいた方が良いでしょう。

基本的に、その場しのぎっていうのは不可能だし

その場しのぎの方が間違いなく高くつくので。


そんなワケでリアブレーキ周りはスッキリ一新して

当たり前ですがブレーキ引きずりもバッチリ解消しまして。


お次はオイルとエレメントの交換。

サクッと終わらせてレッツお渡しですよ🎶

だがしかし、、

エレメント下部にあるはずのスプリングとワッシャーが無い。。



本来であれば92022のワッシャーと92081のスプリングが入っています。

これがクランクケースにエレメントを押し付ける役割を果たしているワケで

これが無いとオイルはエレメントを殆ど介さずに流れていってしまいます。

位置的にエレメント交換時に廃油受けに落ちる事もないし

交換時に組み忘れたとしても、部品トレーにこれらが残るはずなんですがね。


本来であればこうです。

私が思うに、あくまで想像でしかありませんがオイルとエレメント交換が終わって

部品トレーにスプリングとワッシャーが残ってたんじゃなかろうかと。

あぁ、組み忘れちゃったよと。

でもさっき入れたオイルをまた抜いて新しいオイル入れてちゃ損だ。

よし、次回ちゃんとスプリングとワッシャー入れようと。

しかしその次回は来ずに車両は現オーナーに売却。

現オーナーはそんな事知る由もなく部品が足りないままエレメントを交換し続けると。

そりゃあ最初からそうなってればそれが正しいと思っちゃいますよね。

ウチとしてはたかがスプリングとワッシャーを送料かけて再発注して

その間バイクはオイル抜いたまま静置。

早い話がコレ赤字なんですよ。

私は基本的にオイル交換くらい自分でやってもらってOKという考えです。

でもこういう事があるので、バイク屋さんでのオイル交換も意義があるとも思います。

自身でオイル交換するメリットって実はコストじゃないんです。

1番のメリットはオイルの状態を自分で確認できる事。

そして作業として自分でやったという確実性。

これくらいですよね。

廃油処理パックを買ったり、手あるいは自宅の床を汚す事を思うとコスト高なんです。

ドレンボルトのネジ山潰したなんて事もザラにありますし。

オイル交換で高い事言われたと。

それはどうなんだ?

オイル交換の工賃なんて1,000円とか2,000円の世界です。

では価格差はどこに出るかといえばオイルそのもの。

そりゃプロとして水に毛が生えたくらいの

1,000kmほどでシャバシャバになるオイルをお客様の大切なバイクに入れません。

コストと性能維持の両面で色んなオイルをテストして取り扱いオイルを決めています。

つまり安い工賃で多くの事を保証するわけです。

必要な部品が実は入っていなかった。

それはバラさないとわからないし

バラしても本来の姿を知らない人間にはわからない。

気づいていない大事なことに気づいてもらえる。

これがプロに依頼する1番のメリットじゃないかなと。

長くプライベーターとして何でも自分でやってきた私自身がそう思うんですよね。

自分で自分が気づいていなかった事に気づく事は無いんです。

自分の為の第三者としてのバイク屋と思えば

たまには自分でやってる作業をお願いするのも良いんじゃないかなと。

自分でやる事が偉いわけじゃない。

愛車をベストな状態に保つ事が偉いんです。

何を大前提にするか、ちょっと考えてみてもイイんじゃないかなと。

そんな事を思う今日この頃ですよ。


ではさらば!